21世紀委員会
「21世紀委員会」に集められたのは、若手・中堅クラスの精鋭で、20名前後だったでしょうか。この人たちが、会社の将来を担っていくのかと、たいへん頼もしい思いがしました。コンサルタントの指導の下、何度も議論を重ね、提言をまとめていきます。社会・経済環境の分析から、会社のミッション(使命)および事業分野の検討、考えられるシナリオ、克服すべき課題など、議論は尽きません。熱気ある会合は、明るい未来を象徴しているかのようでした。
ところが、全社運動が始まってまもなく、社長の交代が発表されます。新社長は、親会社から来られ、それとともに経営陣が大幅に入れ替えになりました。専務も総務担当取締役も、別会社への転任が決まります。総務部長は変わりませんでしたが、総合企画部長は、別な部署と兼務になり、会社の方針が少しずつ変わりつつあるようでした。
「運動」というのは属人性が高く、人が入れ替わってしまうと、なかなかうまく行きません。前経営陣に説明を重ね、その了解の下で始めた全社運動だったため、新経営陣の受け取り方には、ずいぶん温度差がありました。しかし運動は、すでに「離陸」していましたので、なんとかどこかに、うまく「着陸」させなければなりません。事務局としては何より、熱心に議論し続けている、21世紀委員会のメンバーの人たちの思いを、大切にしたいと願っていました。
ある金曜日の午後に行われた事務局会議で、運動の今後の日程について打ち合わせた直後、同席していた総務部長から、「ちょっといいかな」と呼ばれました。別の小さな部屋に招かれた私は、いきなり辞令を渡され、「来週月曜から2週間、工場に行って、製品の検査をしてくれ」と言う部長の言葉に、耳を疑います。その直前の打ち合わせとは、まったく話が違っていたからです。
私は、あっけにとられ、まじまじと総務部長の顔を眺めましたが、部長も歯切れが悪く、どうやら上の方からの指示のようです。「虚業」にいそしみ、「会議室」で無駄なおしゃべりをしているのではなく、「現場」に行って少し頭を冷やせ、という意味か、と思いました。「すまじきものは宮仕え」という言葉が、一瞬、頭に浮かびました。部長に文句を言っても仕方がないと思ったので、「分かりました」と一言答え、翌週から作業着を着て、製品の全数検査にいそしむことにしました。
ただ私が、2週間工場に行ったくらいで、全社運動の火が消えるわけではありません。本社に戻った後も、委員会の活発な議論は続き、なんとか着地点を探り出そうと、事務局の努力は続きました。
「善を行うのに飽いてはいけません。失望せずにいれば、時期が来て、刈り取ることになります。」(ガラテヤ6:9、新改訳第3版)
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