スチュワードシップ
最近は、カタカナ言葉を使うと、「欧米か!」とつっこまれそうですが、今日のタイトルは、日本語の中でも少しずつ用いられ始めている言葉のようなので、カタカナにしてみました。「スチュワードシップ(stewardship)」とは、預けられたものを責任をもって管理することで、「受託(者)責任」と訳されるようです。「管理(者)責任」と言っても良いでしょう。
「スチュワード」とは、財産管理人、執事、支配人、給仕長などとも訳されるようですが、以前は男性の客室乗務員(キャビン・アテンダント)のことも指していました。女性の場合は、ご存知、「スチュワーデス」です。語源から言えば、「stig(豚小屋)」と「weard(番人)」の合成語で、もともとは「豚小屋の番人」という意味だったそうです。飛行機に乗る人は、みんな豚だったのでしょうか(紅色の飛行艇? 笑)。
聖書の中には、有名な「タラント(タラントン)のたとえ」という話があります。ある人が、財産を3人のしもべたちに預け、旅に出ます。それぞれの能力に応じ、一人には5タラント、一人には2タラント、もう一人には1タラントを預けました。1タラントは、労働者の20年分ほどの賃金に相当したようですから、預けられたのは結構、大きな金額になりますね。
5タラントと2タラントを預けられた人たちは、商売をして、それぞれの金額を倍増させました。ところが、1タラント預けられた人は、土の中に、それをただ隠しておきました。今なら、「タンス預金」でしょうか。とにかく、何もしなかったのです。
お金を預けた主人が旅から帰ってきた時、5タラントと2タラントの人たちは、「よくやった。良い忠実なしもべだ」とほめられましたが、1タラントの人は、預けられたお金を生かさなかったことを怒られました。まだ銀行に預けていた方が、利息がついたのに、と言われたのです。(今の日本の銀行よりも、当時の中東の銀行は、利率が良かったのでしょうか? 笑)
この例え話が、イエス・キリストの口から語られたというのは、意外に感じられるかもしれません。「お金儲けをすること」が肯定的に語られているからです。ただ、ここで重要なのは、彼らが「お金儲け」をした動機は、「受託者」あるいは「管理者」としての責任を果たそうとしたからです。
「主人」とは創造主なる神様のこと、「しもべ」とは被造物である人間のこと。そして預けられた「タラント」は、私たちが地上に生きる人生を通し、神様から管理を委ねられているすべてのものを意味しています。ちなみに、この「タラント」は、英語の「talent(才能、素質、またはそれらを持つ人、タレント)」の語源となっています。
大切なのは、すべては一時的に預けられているという意識です。預けられているものが多いか少ないかは、問題ではありません。5タラントの人も、2タラントの人も、同じようにほめられています。問題は、神様から預けられているものを、自分の好き勝手にしてしまうことです。自分の所有物のように扱ったり、あるいは役に立てようとしないことは、神様の喜ばれることではありません。
「お金儲け」や「徹底した利益追求」は、その背後にある動機が何か、ということが重要です。人はうわべを見ますが、神様は心を見られています。神様に喜ばれる「新しい生き方」をしていきたいですね。
「その主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。あなたは、わずかな物に忠実だったから、私はあなたにたくさんの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』」(マタイ25:21、新改訳第3版)
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コメント
この言葉の本当の意図を知りたくて探していたところ貴殿のサイトを見つけた次第です。大変丁寧な説明ありがとうございました。溜飲を下がる、といったら大げさからもしれませんが、十分理解が出来ました。
投稿: みつ | 2012年9月 5日 (水) 15時21分