グリム兄弟
「ブレーメンの音楽隊」や「赤ずきん」、「ヘンゼルとグレーテル」、「白雪姫」などを発表したグリム兄弟は、兄のヤーコプが1785年、弟のヴィルヘルムは翌1786年に、ドイツ南西部の都市ハーナウで誕生しました。
宗教改革の際、ハーナウに亡命してきたプロテスタントのクリスチャンたちの中に、宝石や貴金属を加工する職人がいたらしいとのこと。グリム兄弟の頃はもちろん、今日に至るまで宝石・貴金属加工が、この都市を支える主要産業となっているようです。
兄弟の祖父は、近隣のシュタイナウで牧師をしていました。兄弟の父は法律家を目指し、1791年にシュタイナウで行政司法官という高い役職に就いたそうです。グリム兄弟は、大きな家に住み、使用人が何人もいるという裕福な少年時代を過ごしたようですね。彼らには4人の弟妹がいたようで、きっと賑やかで楽しい家庭だったのでしょう。
ところが、この幸せな少年時代は、突然、終わってしまいます。ヤコプが11歳、ヴィルヘルムが10歳の時、彼らの父親が肺炎で亡くなるのです。急に収入を失い、困窮する家族を伯母が支援し、兄弟は猛勉強の末、大学に進学、学位を取得します。
一緒に暮らす家族を支え、一日一回だけ、3人分の食事を5人で食べるという極貧の生活をしながら、研究を続け、著作を出版したようです。政治的な荒波にもまれながらも、兄弟でゲッティンゲン大学教授、後にベルリン大学教授となり、ヤーコプはフランクフルト国民議会の代議員としても活躍したようです。
大学時代の恩師サヴィニーから影響を受け、兄弟は古いゲルマン文学に関心を持つようになりました。17世紀のウェストファリア条約以降、神聖ローマ帝国は有名無実となり、ドイツは300にも及ぶ小さな領邦国家が群立します。そして1806年、ナポレオンによって占領されたドイツの人々は、その屈辱的な状況を通し、ドイツ民族の統一を夢見るようになります。
グリム兄弟がゲルマンの古い文化を研究し、童話集を出版したのは、将来のドイツ統一のため、民族的遺産である言語文化を発掘し、伝えていきたいという思いがあったようですね。そして、その「古き良き時代」への思いは、おそらく、自分たちの少年時代の幸せな思い出とつながっていたに違いありません。
苦難を経験したからこそ、幸せな記憶が一層、心の中で光り輝くようになったのかもしれませんね。私たちも、神様からいただいた恵みを忘れず、苦難を乗り越えて生きていきたいですね。
「あなたの恵みを私は楽しみ、喜びます。あなたは、私の悩みをご覧になり、私のたましいの苦しみを知っておられました。」(詩篇31:7、新改訳第3版)
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