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2007年11月 9日 (金)

欧州連合の母

大沼を来訪したドイツ皇弟ハインリッヒのことを調べていたら、ほぼ同じ頃来日した、もう一人のハインリッヒのことを知りました。彼の名は、ハインリッヒ・クーデンホーフ=カレルギー伯爵。1892年にオーストリア=ハンガリー帝国の代理駐日公使として、東京に赴任しています。

こちらのハインリッヒは、東京で一人の女性と、運命的な出会いをします。青山光子という人で、父は骨董商を営み、東京・青山の地名の由来と言われるほどの大地主だったそうです。馬を乗り回して東京見物していたハインリッヒは、ある日、青山家の店先で落馬。その救護にあたったのが光子で、後に二人は結ばれます。近代日本における、公式の国際結婚第1号だったようです。

帰国命令を受けた夫とともに、1896年、光子はヨーロッパに渡ります。渡航前には、明治天皇の皇后から、「日本人としての誇りを忘れないように」というお言葉をいただいたとのこと。新居は、ボヘミア地方のロンスベルク城でした。夫ハインリッヒは、かのハプスブルク家と深いつながりのある貴族だったのです。

ハプスブルク家は、1273年にルドルフ1世が神聖ローマ皇帝となって以来、中断はあったものの、その帝位を継続的に保ち続けた名門中の名門。ヨーロッパに一大勢力を築き、16世紀の最盛期にはスペインとその海外領土、イタリアの一部、ネーデルラント(オランダとベルギー)、そしてドイツとオーストリアに領地を得たそうです。

最後の神聖ローマ皇帝フランツ2世も、もちろんハプスブルク家。彼は、神聖ローマ帝国の代わりに、自らの支配領域であるオーストリアとハンガリーを中心として、オーストリア帝国を形成。これが後に、オーストリア=ハンガリー帝国となります。

光子が渡航した頃は、東洋の未開国から来た、言葉も礼儀作法も知らない女性ということで、周囲の目は冷たかったとのこと。彼女は、家庭教師を雇い、ずいぶん努力したようです。光子への見方が大きく変わるのは、オーストリアと対立関係にあるロシアに、「未開国」日本が勝利した1905年。日露戦争は、光子にとっても大きな意味があったのでしょう。

ところが、結婚14年にあたる翌年、夫のハインリッヒが心臓発作で急死します。光子は、遺産相続の裁判に勝利し、法律、簿記、農場経営の勉強までして、7人の子どもたちを育て上げます。社交界でも「黒髪の貴婦人」として花形的存在だった「ミツコ」は、香水の銘柄にもなりました。第1次大戦では日本が敵国となったため、白眼視されましたが、それでも赤十字活動で懸命に奉仕したそうです。

第1次大戦後、最後のハプスブルク帝国である、オーストリア=ハンガリー帝国が崩壊します。戦争で莫大な損害と犠牲者を出し、「西洋の没落」がささやかれ、自信を失いつつあったヨーロッパに、「汎ヨーロッパ主義」という新しいビジョンでセンセーションを巻き起こしたのは、光子の次男リヒャルト(日本名・栄次郎)でした。彼は、1923年、「パン・ヨーロッパ」という著書を発表。ヨーロッパは、米国のように連邦国家を形成すべきだと主張したのです。

リヒャルトのビジョンは、キリスト教や自由主義を土台とする欧州統合運動を生み出します。その考え方は、ナチス・ドイツとは相容れず、彼は後に、アメリカに亡命します。「EUの父」と呼ばれた彼の生き方は、映画「カサブランカ」のモデルともなったそうです。(ドイツ軍歌「ラインの守り」は、嫌いだったかなあ? 笑)

リヒャルトから始まった欧州統合運動、「国際汎ヨーロッパ連合」は、彼の死後、ハプスブルク家の現当主であるオットー・フォン・ハプスブルクが国際名誉会長になったとのこと。オットーは、最後のオーストリア=ハンガリー帝国皇帝の長子だそうです。欧州統合運動は、第2次大戦後、欧州共同体(EC)、そして1993年には欧州連合(EU)として実を結ぶに至ります。

リヒャルトの母・光子は、「欧州連合(案)の母」とも称されたようですね。離日して45年、一度も帰国せず、1941年に67歳で亡くなりました。日本からヨーロッパに渡った「光の子」は、父を亡くした子どもたちの歩む道に光を照らし、その子どもの一人は、ヨーロッパの行く末に光を照らしたのでしょうか。

イエス・キリストを信じる者は、創造主なる神様の光を輝かせる人生が与えられています。「光の子ども」として、良い実を結んでいきたいですね。

「あなたがたは、以前は暗やみでしたが、今は、主にあって、光となりました。光の子どもらしく歩みなさい。──光の結ぶ実は、あらゆる善意と正義と真実なのです──」(エペソ5:8-9、新改訳第3版)

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