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2007年11月28日 (水)

ホステスから牧師夫人へ

「イエス様が、俺を助けてくれるんや。頼みもしないのに、自分の命を捨ててまで、他人の罪を償ったイエス様。俺は自分で死ぬこともできへんかった人間や。せやのに、この人は他人のために自分を犠牲にすることができたんや。とっても、かなわん。この人が俺の親分やったら、俺はもう一度、人生をやり直せるかもしれへん。」「イエス様、俺の生き甲斐になってください。」

暴力団仲間から追われ、愛人と東京に逃げた夫・鈴木啓之さん(現シロアムキリスト教会牧師)が、新宿の教会で真剣に祈り始めた時、妻のまり子さんはまったくそのことを知りませんでした。ただひたすら、夫が大阪に帰ってくるよう祈り、幼い娘とともに待ち続けていたのです。5億円もの借金をした末、ヤクザの掟破りをして命を狙われている夫が、愛人と手を切って、無事に大阪に帰ってくることなど、まさに神様の奇跡に期待するようなものでした。

鈴木まり子(韓国名・韓錦子)さんは、かつてコリアンクラブで働くホステスでした。父はアル中で働かず、母が小さな食堂を営み、家計を支えていました。水商売で稼ぎ、お母さんを楽にしてあげようと思い、来日したのは、30歳を過ぎてからです。大阪・ミナミのコリアンクラブで、ばくち打ちの啓之さんと出会いました。ピンク色のチマ・チョゴリを着ていたまり子さんに、啓之さんは一目ぼれだったそうです。

店のチーママに誘われて、教会に顔を出すようになったまり子さんが、神様を心から信じるようになったのは、ひざのケガが奇跡的にいやされてからです。店の入口でヒールを引っ掛け、階段を転げ落ちた時、半月板を骨折し、全治3ヶ月で手術が必要だと診断されました。ところが、教会で牧師が祈ると、その場で直ってしまいます。初めて体験する、神様の奇跡でした。

同棲相手の啓之さんとは、結婚したくないと思っていました。ヤクザで多額の借金を抱えていたからです。ところが、家庭礼拝にやってきた牧師が啓之さんとの関係を知ると、結婚しなさいと言い、日取りまで決めてしまったのです。しぶしぶ結婚したまり子さんは、その後すぐに身ごもり、水商売から足を洗いました。夫も、いつかはヤクザをやめてくれると期待していたそうです。

夫の更生を信じ、大きな声で必死に祈り続けたまり子さんの顔は涙にぬれ、部屋は鼻をかんだティッシュが散乱していたとのこと。あまりの祈りの激しさに、アパートの上階に住む人が苦情を言いに来たこともあるそうです。夫に捨てられたと知った後も、「神様、主人を帰してください」と祈り続けました。

そんなある日、啓之さんは、突然帰宅します。神様の愛を知り、もう一度人生をやり直したいと決意した結果でした。大阪は危ないので、家族で東京に移り住むことにします。かつて夫が愛人と暮らしたマンションに引っ越すと、絶望感と夫への不信感で押しつぶされそうになりました。「夫を赦せないけど、赦せる力をください。愛せないけど、愛せる力をください」と祈ったそうです。

夫のかつての愛人から電話が掛かって来た時、「私は人間だからあなたを赦せないけど、私はイエス様を信じるから神の愛で赦します」と伝え、まり子さんの過去の心の傷は、完全にいやされました。今は、牧師夫人として、ご主人とともに教会を支えておられるようです。

「主人の変わりようには私が一番びっくりしてます。神様は私が思っていた以上のまじめな夫にしてくれました」と語る鈴木まり子さん。彼女の真摯な祈りに、神様は確かに答えて下さり、啓之さんは新しく変えられました。神様の恵み、奇跡のみわざに感謝します。

「しっかりした妻をだれが見つけることができよう。彼女の値うちは真珠よりもはるかに尊い。」(箴言31:10、新改訳第3版)

(今日の記事は、坂口さゆり著「バラバの妻として」NHK出版、を参考にさせていただきました。)

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