和の国の大祭司
7年ほど前、天皇の国事行為に責任をもつ内閣総理大臣が、日本は「天皇を中心としている神の国」だと発言し、論議をよびました。憲法の規定する国民主権や政教分離の原則に反するのではないか、という批判がなされたようです。天皇が「日本国と日本国民統合の象徴」とされている限り、天皇が日本の中心にいるという考え方には、一理あります。
私が引っかかったのは、「神の国」の方でした。発言の場は、神道関係の会合だったようで、それは明らかに、「八百万の神々を奉る国」という意味として理解されました。日本には、神道の神々を信じない人たちも多くいるわけですから、これは「日本は単一民族だ」という発言同様、内閣総理大臣の発言としては配慮がなさすぎます。
日本は、「神の国」より、「和の国」という呼称の方がふさわしいように思えます。「和」は、日本を表す言葉として古くから用いられており、「和をもって貴しとなす」という原則は、聖徳太子の時代以来、日本人のDNAに組み込まれてきているように感じます。「ソト」の世界に対しては攻撃的な側面を見せたりしますが、「ウチ」の世界においては、和を保つことが重要視されます。「平和主義」という日本国憲法の原則も、「和」の伝統とマッチしています。
天皇は、この「和の国」の象徴とされています。聞くところによると、天皇家で最優先されるのは、国事行為などのいわゆる公務ではなく、宮中祭祀を中心とした「神事」だそうです。君主として内閣が指定した政治活動に関わることよりも、祭司として神を礼拝し、祈りをささげることを第一の使命と考えている、ということですね。
古代イスラエルでは、祭司は世襲でした。祭司の長は「大祭司」と呼ばれ、モーセの兄・アロンの子孫が代々その職を継承しました。大祭司は、全国民を代表して神殿で礼拝をささげ、年に一回、神殿最奥部にあたる「至聖所」に入り、創造主なる神とその選びの民の「和」を特別な方法で祈り求めました。
皇室の宮中祭祀は、ブラックボックスのようで、中でどのようなことが行なわれているのか、実際はよく分かりません。政教分離の原則に沿い、天皇家の私的な活動として位置づけられているそうですが、日本の安寧と繁栄、世界の平和を祈願しているようです。これは、まさに「和の国の大祭司」のようですね。
もし、天皇家の私的な活動であるなら、信教の自由は保障されるはずです。皇室の方々がみな創造主なる神、救い主イエス・キリストを信じ、クリスチャンとなっても、それはご本人たちの選択であり、周りの人がとやかく言うべきでないということになります。神道の神々には、世界の平和をもたらす力があるかどうか、定かではありません。しかし、全能の神、「天の王」たるキリストには、その権威と力があります。
イエス・キリストは、全世界に広がる「神の国の大祭司」とされています。人類を代表して十字架につかれ、その血潮により人々の罪をつぐなわれ、永遠の「贖(あがな)い」、つまり創造主なる神様との「和」をもたらして下さいました。大祭司イエスを信じる私たちが、「キリストを中心とする神の国」の一員とされていることを感謝します。
皇室関係者には、すでに多くのクリスチャンがいる、という話も聞いたことがあります。本当かどうか確かめようがないですが、天皇家の人々も、創造主なる神様による永遠の祝福を受け取ってほしいですね。それは、象徴たる天皇家のみならず、確実に「和の国」全体の祝福へとつながります。
「しかしキリストは、すでに成就したすばらしい事がらの大祭司として来られ、…ご自分の血によって、ただ一度、まことの聖所に入り、永遠の贖いを成し遂げられたのです。」(ヘブル9:11-12、新改訳第3版)
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 自由からの逃走、自由への逃避(2007.12.21)
- アイデンティティ(2007.12.20)
- 刷り込みからの自由(2007.12.19)
- 韓国人と日本人(2007.12.14)
- 中国人と共産主義(2007.12.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
イスラエルの国民は、ユダヤ教の方が多いと思いますが、せっかく国を再興したのに、神殿の建設とか、大祭司が全焼のいけにえを捧げたりはしないのですか?
嘆きの壁で、祈る姿はよく眼にするのですが...
投稿: コナン将軍 | 2007年12月 7日 (金) 15時01分
コナン将軍さま
神殿を再建したくても、できないんです。
神殿を建てるべき場所は昔から決まっていて、そこはイスラム教徒が管理し、モスクが建っているからです。
無理やり建てようとすると、また大規模な戦争になるかもしれません。
クトゥファンさま
コメントありがとうございました。
当方は、ご指摘いただいたメディアとは特に関係がありません。
投稿: shigeki | 2007年12月 7日 (金) 19時50分