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2008年4月 9日 (水)

「使徒」ルター

1517年10月31日、マルティン・ルターはヴィッテンベルク城教会の掲示板だった扉に、「95ヶ条の論題」と呼ばれる文書を貼り付けました。大学教授かつ司祭だった一人の人物が、神学上の議論を求めて行ったこの行為が、世界史上の大事件となることなど、この時点では本人を含め、誰も予想しなかったのではないでしょうか。「神のみぞ知る」とは、まさにこのことです。

ルターが疑問を感じていたのは、100年前の「預言者」フスと同様、贖宥状の販売でした。(フスについては、こちら参照→ http://lifestream.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_8374.html

贖宥状を購入さえすれば、罪の償いが軽減されるというキャッチフレーズは、罪の問題に悩みぬき、ようやく「信仰のみ」という境地に達したルターにとって、見逃すことの出来ない神学的テーマだったのです。

ルターの時代、さかんに贖宥状が販売されたのは、ローマ(現在はバチカン)にあるサン・ピエトロ(聖ペテロ)大聖堂の莫大な建設費用を捻出するためです。ドイツにおいて大々的に贖宥状が販売された背景には、マインツ大司教の座を多額の献金で獲得し、後に枢機卿にまで昇りつめたアルブレヒト・フォン・ブランデンブルク、そして販売益の50%を懐におさめた当時の大富豪フッガー家の思惑もあったとのこと。キリスト教会は、明らかに悔い改めるべき時が来ていました。

ルターの「論題」は、数週間のうちに、ドイツ中に印刷されたコピーが配布されたそうです。それだけ、贖宥状販売を問題視していた人たちは、多かったのでしょう。贖宥状の売り上げは急落し、ルターを異端だと攻撃する勢力が騒ぎ出し、ローマ教皇庁は事態を静観できなくなりました。

この後、数々の論争を経て、ルターはカトリック教会から除名されます。しかし、ルターはフスの場合と違い、神聖ローマ皇帝の対抗勢力だったドイツ諸侯たちの保護を受けられたため、処刑されることはありませんでした。身の安全が守られる中、彼は次々と著作を発表し、聖書をドイツ語に翻訳します。教会改革運動の同調者とともに、新たな教会づくりのための教義をまとめ、音楽によって信仰を表現できるよう、賛美を歌うことも提唱しました。

ルターの働きを通して生まれ、世界最初のプロテスタント教会となる「ルーテル教会」は、その後、世界中に広がっていきます。「近代音楽の父」と呼ばれるヨハン・セバスティアン・バッハやオラトリオ「メサイア(キリスト)」で有名なゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデルも、ルーテル教会員だったそうです。

「領邦」を治める諸侯を中心とした「領邦教会」という新たな教会のあり方は、ドイツや北欧諸国に根を下ろし、1555年のアウグスブルクの和議により、ヨーロッパにおける市民権を得ます。領主が領地の信仰を決定するという考え方は、イギリスにおける宗教改革にも、少なからず影響を与えたのではないでしょうか。

ルターは、本人が当初意図しなかったにも関わらず、神様から与えられた使徒的な働きを突然担うことになり、新たな教会のネットワークを形成することになりました。その働きは、後に出現する無数の使徒的リーダーたちや教会ネットワークのモデルとなります。結婚して家庭を築くという新たな牧師像も、ルターを通して初めて、西欧のキリスト教世界に示されました。

皇帝カール5世がルター尋問のために招集したヴォルムス帝国議会の場で、自説を撤回するよう求められたルターは、こう宣言したそうです。「…明らかな理由によって誤りだとされない限り、私は自分が正しいと信じてきたことを何も捨て去ることはできないし、また、そうする意志もありません。…私はここに立っています。私には他のことはできません。神よ、私を助けて下さい。アーメン。」

神様は、ルターの祈りに確かに答えて下さり、彼の働きを助けて下さいました。私たちも、いつも助けて下さるイエス・キリストを信じ、創造主なる神様から与えられている使命を十分に果たしていきたいですね。

「神は、私の敵から私を助け出される方。まことに、あなたは私に立ち向かう者から私を引き上げ、暴虐の者から私を救い出されます。それゆえ、(創造)主よ。私は、国々の中であなたをほめたたえ、あなたの御名を、ほめ歌います。」(詩篇18:48-49、新改訳第3版)

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