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2017年4月

2017年4月30日 (日)

証人として語る

 今日は、神の民のアイデンティティシリーズ第5回です。これまでのテーマは神の作品、旅人、祭司、王族でした。今回のテーマは証人です。イエス・キリストを信じる人は、キリストの証人とされています。

 先月、肥田舜太郎という方が亡くなられました。100歳でした。広島出身の医師で、28歳の時に原爆に被爆しました。それ以来、被爆者の治療に携わり続けました。当初は、それが反米活動とみなされました。原爆投下直後、日本を占領したのは米国軍でした。彼らは、原爆の影響に関する情報を軍事機密にしたのです。占領期間が終わる時、日本は米国と安全保障条約を結びました。米国の「核の傘」の下に入りました。そのため日本政府は、広島や長崎の原爆被害について、その後も詳しい調査を行わなかったようです。被爆者たちは、ほったらかしにされました。結婚や就職などで、差別を受けるようにもなりました。被爆者だと名乗り出るのが難しくなりました。

 肥田氏は引退するまで64年間、6,000人を超える被爆患者を診療しました。占領軍に3回逮捕されましたが、ひるみませんでした。診察した多くの人が、原因も治療法も分からず死んで行きました。その状況を見て、怒りがこみ上げて来たそうです。無力さも感じました。ほとんどの医者が、逃げてしまったそうです。でも肥田氏は、逃げませんでした。目の前の被爆患者たちを放っておけなかったのです。2011年の原発事故の後は、内部被爆の危険性を訴え続けました。過去の過ちを繰り返さないよう、政府や東京電力に徹底した情報公開を求め続けました。最期まで、被爆の証人として語り続けた生涯だったようです。

 肥田氏が亡くなった日、私は大阪で娘の結婚式に出席していました。そしてその2日後、何も知らずに妻と二人で広島を訪問しました。広島は初めてでした。いつか平和記念公園に行きたいと思っていましたが、やっとその時が来ました。大阪に行くので、思い切って広島までの旅行にしたのです。目の前で見る原爆ドームは、圧倒的な存在感がありました。原爆は、ドームの真上600メートルで爆発したそうです。20万人以上が死亡し、半径2キロの市街地が廃墟となりました。原爆ドームは、1996年に世界遺産に登録されました。看板には、ドームについてこういう説明がありました。「人類史上初めて使用された核兵器の惨禍を伝える歴史の証人」。公園内にある慰霊碑や資料館も見学しました。公園全体が、原爆被害の悲惨さを証言し、過ちを繰り返してはならないと強く訴えているようでした。

 創造主なる神は、全人類の中から証人を選ばれました。神から離れる悲惨さを証言し、過ちを繰り返してはならないと訴える人々です。選ばれたのは、アブラハムとその子孫たち。彼らは、アダムとエバの過ちを証言しました。ノアの時代の人たちの過ちも証言しました。バベルに塔を建てた人々の過ちも証言しました。自分たちの過ちも証言しました。そして彼らは同時に、悔い改めた人に対して神がどんなに恵み深かったかも証言しました。自分たちに不利な証言であっても、彼らは記録を廃棄しませんでした。自動的に消去するシステムもありませんでした。過ちを繰り返さないよう、全世界に情報を公開したのです。

 イエス・キリストを信じる人は、アブラハムの子孫とされています。どんな過ちを犯した人でも、心から悔い改めて赦しを請うなら、神の恵み深さを体験できます。不利な情報も隠ぺいする必要はありません。私たちは、神の素晴らしい恵みの証人とされるのです。

「あなたがたはわたしの証人、──主の御告げ──わたしが選んだわたしのしもべである。これは、あなたがたが知って、わたしを信じ、わたしがその者であることを悟るためだ。わたしより先に造られた神はなく、わたしより後にもない。わたし、このわたしが、主であって、わたしのほかに救い主はいない。」(イザヤ43:10-11)

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2017年4月23日 (日)

王族の特権を喜ぶ

 今日は、神の民のアイデンティティ・シリーズ第4回です。第1回のテーマは神の作品、第2回は旅人、第3回は祭司でした。今日のテーマは、王族です。王族とは、王の一族のこと。イエス・キリストを信じる人は、天の王族の身分が与えられています。

 童話の中には、身分の低い主人公が王族になる話があります。最も有名な話の一つは、シンデレラですね。シンデレラは、継母や姉たちにいじめられていました。お城の舞踏会があっても、ドレスを用意してもらえませんでした。しかし不思議な助けがあり、舞踏会に出席します。シンデレラと会った王子は、一目ぼれしました。ガラスの靴を手掛かりに彼女を探し出し、結婚します。シンデレラは、こうして王族の仲間入りをしました。そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。この話が、いわゆる「シンデレラ・ストーリー」という言葉の由来です。ごく普通の人が、驚くばかりの成功や幸せをつかみ取った時のことを言います。女性だけでなく、男性の場合にも使われます。日本語にも、似たような意味で「玉の輿に乗る」という表現があります。この表現は普通、女性の場合に使われます。男性の場合は「逆玉」と言ったりします。シンデレラは玉の輿ですが、アラジンは逆玉ですね。

 シンデレラは王子と結婚し、王族としての特権を手に入れました。特権の一つは、愛する王子とともにお城に住むことです。ディズニーランドにあるシンデレラ城のようだったかもしれません。お城の生活は、慣れないことが多かったはずです。しかし彼女は、継母や姉たちに十分鍛えられていました。どんな困難も、きっと乗り越えることができたに違いありません。特権の二つ目は、豊かな暮らしです。食べ物はもちろん、着るドレスにも困らなかったはずです。どんな舞踏会にも、誰もが心を奪われるような美しい姿で登場することができました。午前0時を過ぎても、見すぼらしい姿にはなりません。特権の三つ目は、王族としての公務です。国王の代理としてさまざまな場所に出掛け、人々を励ますことができました。彼女は多くの人々から愛され、人気が高かったはずです。シンデレラはこれらの特権を十分に活用し、幸せな生涯を送ったと想像できます。

 旧約聖書の時代には、エステルという「シンデレラ」が実在しました。彼女は、捕囚のユダヤ人でした。王妃を探していたペルシア王に見初められ、結婚しました。ペルシアの王族となり、王宮に住むようになりました。食卓には毎日、美味しい食事が並んだはずです。最高のメイクをし、美しいドレスを着て、目もくらむようなジュエリーを身に着けました。王妃主催のパーティーを開き、大切なゲストをもてなすこともしました。彼女がした最も重要な公務は、帝国内にいたユダヤ人を大虐殺から救ったことです。彼女の勇気ある行動は、多くの人を励まし、人々の模範となりました。

 イエス様は、天の御国の王子として王妃を捜しに来られました。イエス・キリストを信じる人は、誰もがシンデレラです。キリストの花嫁として、天の王族に加えられます。王に即位したイエス様が住む、永遠の王宮に迎え入れられます。まばゆいばかりに光り輝く、純白のドレスを身に着けます。あらゆる必要が満たされた、豊かな暮らしを満喫できます。王族として公務も行います。天の御国のシンデレラは、このような素晴らしい特権を手にし、喜ぶことができるのです。

「しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。」(ヨハネ1:12)

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2017年4月16日 (日)

良いスタートを決める

 先日、近くのイオンに行ったら、なんとイースターの歌が流れていました。きゃりーぱみゅぱみゅさんの新曲です。歌の後にナレーションが入り、「イオンで始めよう、イースターパーティー」とか言っています。今日4月16日までのセールの案内も、店内のあちこちに貼ってありました。「とうとう、イオンもイースターか」と驚きました。店内のスピーカーでは歌詞がよく聞き取れなかったので、帰宅してすぐネットで調べました。キャッチフレーズは「日本初のイースターパーティーソング」。でも歌詞は「イースター」ではなく、「いいスタート」と歌っていました。春は、新しい場所で新たな戦いを始める季節。だから「いいスタートを決める」という歌でした。ミュージックビデオも見ました。「不思議の国のアリス」のようでした。きゃりーは卵の王国の王女で、新たに旅立つところ。その彼女を、大勢の卵たちが盛大なパレードで送り出すというストーリーです。その後、テレビのCMも見ました。こちらの映像は卵の王国ではなく、地球上のようでした。田舎ののどかな場所で、きゃりーと子供たちが野外のパーティーを楽しんでいました。王女は卵の王国から地球に来て、新しい生活を始めたのかもしれません。

 イオンのCMもミュージックビデオも、イースターがキリスト復活のお祝いだと一言も言っていません。イオンのホームページには、こう書かれていました。「春の訪れを喜びお祝いする祭典、それがイースター。あたたかい太陽の日差しと清々しい風が自然と気分をウキウキさせてくれる。そんなウキウキする気分を、家族や気の合う仲間と分かち合う。ただ、それだけでいい。」イオンのCMで、きゃりーが演じるキャラクターは「春の女神エオストレ」という名前です。ある人によると、エオストレとはキリスト教が広まる前、ヨーロッパで信じられていた女神だそうです。春の温もりをもたらすこの女神に感謝をささげ、春分の頃に祭りをしたとか。女神の名前にちなみ、祭りはイースターと呼ばれたという話。日本にはクリスチャンが少ないので、イースターは馴染みがありません。そこでイオンは女神エオストレを持ち出し、「イースターパーティーをしましょう」と呼びかけたのでしょう。

 イスラエルでも、旧約聖書の時代から春の祭りがお祝いされて来ました。「過越の祭り」と呼ばれています。エジプトで奴隷だったユダヤ人たちの解放を記念する祭りです。長い冬のような奴隷生活を耐え忍んだユダヤ人たちに、春がやって来ました。彼らに春をもたらしたのは、女神エオストレではありません。全世界を造られ、季節の移り変わり全てをコントロールしている唯一の神様です。ユダヤ人たちは、その神から遣わされた指導者モーセに率いられ、エジプトから約束の地へ旅立ちました。唯一の神とともに進む新たな生活をスタートさせました。ユダヤ人は今でも毎年この祭りを祝い、各家庭でホームパーティーを行っています。

 イエス様は、この祭りに秘められた深い意味を明らかにされました。この祭りは、創造主なる神が救い主を遣わし、全人類を奴隷状態から解放することを象徴していたのです。イエス様は十字架の上で死に、三日目によみがえられました。長い間、全人類を支配していた死に勝利されました。イエス・キリストを信じる人は、このよみがえりのいのちが与えられます。永遠の天の御国に向かい、創造主とともに歩む新たな人生がスタートします。旅立ちを祝うパーティーも楽しめます。イエス様が、全人類に春をもたらして下さいました。イースターは、この祝福をお祝いする日です。きゃりーぱみゅぱみゅさんもイオンの人たちも、永遠の祝福に向かって良いスタートを決められるといいですね。

「しかし、今やキリストは、眠った者の初穂として死者の中からよみがえられました。というのは、死がひとりの人を通して来たように、死者の復活もひとりの人を通して来たからです。すなわち、アダムにあってすべての人が死んでいるように、キリストによってすべての人が生かされるからです。」(Ⅰコリント15:20-22、新改訳)

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2017年4月 2日 (日)

祭司の務めを果たす

 今日は、「神の民のアイデンティティ」シリーズ第3回です。今日のテーマは、祭司です。祭司とは、目に見えない霊的存在と人間との間の架け橋となり、信仰に基づく行いをする人です。日本の多くの人に馴染みがある祭司は、神主かお坊さんでしょう。日本では、おおよそ神道と仏教の棲み分けがなされています。多くの場合、結婚式等のお祝い事は神主、葬儀等のお悔やみ事は僧侶が担当します。神道に基づく結婚式では、神主は神々に新郎新婦の結婚を報告します。ふたりの身の汚れをはらい、幸せを祈願します。仏教に基づく葬儀では、死者が極楽浄土にたどり着けるよう、僧侶が念仏を唱えます。いずれにせよ神主やお坊さんは、神々や仏等の霊的存在と人間の間を橋渡しします。それぞれの信仰に基づき、結婚式や葬儀等の儀式を執り行います。

 聖書では、初めに3人の異邦人祭司が登場します。一人目は、メルキゼデクです。彼はシャレムの王で、いと高き神の祭司でした。いと高き神とは、創造主です。メルキゼデクは創造主なる神の御前に立ち、アブラハムの祝福を祈りました。二人目は、エジプトの太陽神の祭司ポティ・フェラです。彼の娘は、パロの命令によりヨセフと結婚しました。ポティ・フェラがヨセフの神を心から信じたかどうかは、分かりません。しかし義理の息子の働きを通し、少なくともヨセフが信じる神の偉大さは理解したはずです。娘の幸せについても、ヨセフの神に祈り求めたかもしれません。三人目は、ミデヤンの祭司イテロです。彼の娘チッポラは、モーセと結婚しました。ミデヤン人は、アブラハムの子孫です。サラの死後、アブラハムは再婚し、彼らの先祖が生まれました。しかしミデヤン人は、偶像の神々を拝むようになりました。イテロも偶像の神の祭司だったようです。ところが彼は、驚くべき出来事を目にしました。エジプトの親戚に会いに行った娘婿が、数々の奇跡の末、何百万人ものユダヤ人を連れ帰って来たのです。イテロは、イスラエルの神が全ての神々にまさって偉大だと理解しました。その神にいけにえもささげました。祭司イテロはその後、イスラエルの神だけを拝んだかもしれません。

 出エジプトの後、神様はユダヤ人に特別な使命を授けられました。彼らが「祭司の王国」となる使命です。世界中のほとんどの人が、創造主なる神から離れていました。偶像の神々を拝んでいました。そのような世界で、ユダヤ人は真の神と異邦人との架け橋になったのです。創造主なる神を信じ、その命令を行う特別な人々に選ばれました。その中で特に中心的な役割を担ったのが、モーセの兄アロンとその子孫たちです。彼らは、祭司の王国の祭司に任命されました。国全体が全世界の祭司として活躍するため、アロンの子孫は霊的リーダーシップを十分に発揮するよう期待されました。しかし残念ながら、そうなりませんでした。ユダヤ人たちは、神から与えられた特別な使命を忘れ、他の神々を拝むようになったのです。こうして祭司の王国は、滅亡しました。

 イエス・キリストは、この祭司の王国をよみがえらせて下さいました。ユダヤ人だけでなく、異邦人も祭司になる道を開いて下さいました。血筋に関係なく、信じる人は全て創造主なる神の祭司とされます。「万人祭司」です。神主もお坊さんも、信じるなら真の神の祭司になれます。神様と直接お話しできます。周りの人の祝福を祈ることができます。創造主の素晴らしさを伝えることもできます。神様は今、私たちにこの特別な務めを委ねておられるのです。

「しかし、あなたがたは、選ばれた種族、王である祭司、聖なる国民、神の所有とされた民です。それは、あなたがたを、やみの中から、ご自分の驚くべき光の中に招いてくださった方のすばらしいみわざを、あなたがたが宣べ伝えるためなのです。」(第一ペテロ2:9)

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