自由からの逃走、自由への逃避
エーリッヒ・フロムという社会心理学者が、「自由からの逃走」という本を書いています。ユダヤ系ドイツ人で、ナチスが台頭してきた1934年、アメリカに亡命したとのこと。ドイツにそのまま住んでいたらホロコーストの犠牲になり、41年に発表したこの著作は、日の目を見なかったかもしれません。
フロムが分析したのは、近代社会における個人の自由が、なぜファシズムを支持する方向に向かったのかという「逃避のメカニズム」です。近代の到来とともに伝統的束縛から解き放たれた多くの人々は、自由のもたらす孤独感と無力感に耐えられず、自ら自由を放棄し、ナチズムなどの全体主義に身をゆだねるようになったと指摘されています。
私がこの本のことを知ったのは、クリスチャンになる少し前、「日本人論」に凝っていた頃だったと思います。第二次大戦後の日本は、「戦前レジーム」という伝統的価値観を否定し、自由と民主主義を土台として社会を形成してきました。しかし、同時に「日本人論」が人気を保ち続けるという状況は、多くの人々が伝統的価値観への郷愁を感じており、何かをきっかけとして再び国粋主義へ雪崩現象のように「逃避」し得る可能性を暗示しているのではないか、と私には思えました。
「いつか来た道」に戻るのが嫌だった私は、結局、イエス・キリストへ「逃避」することにしました。そして、それが間違いでなかったことを今、感謝しています。なぜならキリストは一般的な理解とは異なり、束縛(「奴隷のくびき」)ではなく、自由を与えて下さるお方だからです。フロムは、「自由の国」アメリカへと逃避しましたが、私は、天上の自由を保障する「のがれの地」、「神の国」へと亡命したわけです。
多くの人々は、自由を求め、かえって不自由に生きています。イエス・キリストこそが、創造主なる神様からすべての人に約束されている「真の自由」を回復して下さるのです。真の自由を享受する「日本人」がさらに増え広がり、心を合わせて、自由放棄への雪崩現象を未然に防いでいけることを願っています。
「キリストは、自由を得させるために、私たちを解放してくださいました。ですから、あなたがたは、しっかり立って、またと奴隷のくびきを負わせられないようにしなさい。」(ガラテヤ5:1、新改訳第3版)
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